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勲章

これは浩三さん書いた小説「勲章」(1942年)を歌しばいにしようと、再構成して書き起こしたものです。

僭越ながら、私と浩三さんの合作です(2006年12月)。

初演は2007年2月に新横浜スペースオルタで、西川亘さんとの掛け合いで歌いました。

勲章をはじめてもらった彼はすぐさま恋人に見せに行った

彼女は大きな目をくりくりさせて「まあきれい」 そういった

手柄話をたずねもせずに彼女はひとこと「くださらない?」といった

「あなたのほしいものならなんでもあげたい けれどこれだけは」 と応えた

彼は困った顔して「ほまれ」に火をつけ 絵描きの男に見せに行った

男も「ほぅなかなかきれいなものだね」としばらく眺めていた

そして「どんな手柄でもらったの」とお義理でいうように言った

彼は手柄話をしながら あじけなくばかげたような気がした

かの恋人はほかの男とケッコンし 彼は生きる気をなくし死ぬることを考えた

それで戦場ではいつも危険な仕事をやった けれど死ななかった

勲章を増やした彼は勲章を大切にする女とケッコンした

だが妻は彼が無事で帰ることを喜び 勲章には喜ぶふりをした

彼はいつからか勲章をぶらさげて人前に出るのを好まなくなった

だが勲章を並べてひとり眺めるのはまだ楽しみなことであった

彼は61歳で退役し孫は五人、釣りや弓をして暮らした

自分を幸せものだと思って大いに満足して暮らした

ある日くだんの絵描きの男にたくさんの勲章を見せた

いまだにぶらぶらしている絵描きはひとつひとつ眺めると言った

「君はまるで勲章をもらうために生きてきたようだ。りっぱだね」

彼は絵描きが帰ってから 急にふさぎこんでしまった

「おれのしてきたことはたったこれだけのことだったのか」

彼は苦しくなり、病気になってしまった

「くださらない」といったむかしの恋人の眼が浮かんでは消えた

「やってしまおうか」と考え 彼女に会いに出かけた

おじいさんとおばあさんになったふたりは茶をすすりながら静かにすわっていた

孫のことなども話し合い あのときの勲章をおもむろに出した

彼女は手にとってしばし眺めたがとつぜんそれをぽいと口に入れた

勲章をなめながら彼女は大きな目をくりくりさせて笑った

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コメント

11日、赤門さんでのライブ すてきでした
すばらしい合作です!浩三さんもよろこんでいますよ ぜったい!

最後に、勲章をほうばるカノジョは、そのとき 老婆からどんどん若返っていって 勲章をなめている横顔は、「くださらない」といったときの 若く美しい姿だと 私はイメージしています。

少し認知の悪くなられた、かわいらしい老婆というのもありですけどね。

ただ、「ぽいっ!」という擬音は違和感ありました。「ぽいっ」って捨てる感じがしました。

以上、感想。また お聞きするときを楽しみにしています。

投稿: あんず | 2008年5月14日 (水) 20時42分

ふむふむ。あんずさん、ありがとう。
私自身、少々認知の悪くなられた? 状態でして。
「ぽいっ」の意味を再考します。たぶん、もっと愛情こめて ぽい すればと思う。

投稿: こぞっぺ | 2008年5月28日 (水) 21時26分

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