8年目の夏、ブログ始めます
詩人・竹内浩三さんのユーモラスな作品が好きで、それに曲をつけて「歌を届ける旅」という活動を始めて8年目。なにごとも飽きっぽいのにフルタイムで働きながらのプライベートな活動がこんなに続いているのは、根っから好きなことであるからだろう。
私は 場をつくることと歌をつくることが、ご飯を食べるより、ビールを飲むのと同じぐらい好きである。この旅を通して、さまざまな方に出会い、生きている手ごたえを感じてきた。
発端は2000年夏に竹内浩三さんのお姉さん(松島こうさん)に歌「骨のうたう」をきいていただこうと届けたことがすべての始まりだった。以来、いつのまにか自分で歌うことも避けて通れなくなり、昨年は夏に浩三さんのふるさと三重県伊勢市のホールで行った歌と朗読のコンサート録音をCDにもした。秋には三重県の高校や中学の体育館で総合学習、人権学習という場によんでいただき、何百人という生徒を前に、歌って語った。
高校生が朗読をするコラボ企画も作った。台本をセンセイといっしょに考えた。担当の先生ももちろん浩三さんの作品が大好きで、「なんとかコゾノさんの歌をきっかけに子どもたちに伝えられたら」とおっしゃってくださり、学年会議で企画が通るよう準備をていねいにして、了解をとりつけ、よんでくださった。なんと浩三さんの詩についての事前学習が全クラスで行われたうえで、歌を聴いてもらえた。
いまはどこの職場も管理がきつくて大変な状況の中で、学校の先生というしごともたいへんストレスフルでありそうだ。私も組織で働いているので、普段と違うことを、ある意味でよけいなことかもしれないことを全体を説き伏せて実行するのがどんなにたいへんなことか、よくわかる。こういう先生がいてくれるから、まだ世の中もっているのだな、と思った。
さて当日高校生たちはさすがに、友だちが読み手として舞台に出ているとあれば、しゃべったり寝たりはしない。「おまえ、まちごうとったやないかー」などと終わってから言ってくるほど、熱心に聴いていた。後日、山のようなアンケートが送られてきた。
この活動をやってきてよかった。そう思った。
数年前の初めの頃、会場に来てくれた高校生に「これなら部屋で浩三詩集を読んでいたほうがよかった」とアンケートにかかれたことがあった。継続は力なり。「歌の力、伝える力を感じた」といわれるのはうれしい。
1945年にあの戦争で亡くなってしまった浩三さんの、戦場にあって「飯ごうの底に爪ででも詩を書きつけよう」と書いた、自由なたましいが今の時代に必要だと思う。失恋の詩、いじいじと「かなしいことも分け合って生きていくんだ」と書いていたりするのも好きである。
私の大好きな詩を書いて初めのページ、終わり。親友の中井利亮さんへ軍隊から送ったはがきの文面だ。
うたうたいはうたうたへと
きみ云へど口重く うたうたえず
うたうたいがうたうたわざれば
死つるよりほかすべなからんや
魚のごとあぼあぼと
生きるこそかなしけれ
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- 8年目の夏、ブログ始めます(2007.06.09)
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